貧困国パナマは欧米のタックスヘイブン(租税回避地)としても有名なのだが、このパナマにある法律事務所「モサック・フォンセカ」の金融取引の40年分の実態が大量流出している。
2014年に匿名の人物がドイツの新聞社に少しずつリークしていったものだが、今のところ、誰が、何のために、それをリークしたのか何も分かっていない。
法律事務所「モサック・フォンセカ」は、これを外部からのハッキングによる流出であると話しているのだが、一部では内部告発で漏洩したのではないかとも言われている。
何しろ、流出した情報は1150万件、総データ量は2.6テラバイトを超えるものであり、1970年代から行われたタックスヘイブンの金融取引の多くが網羅されていたのである。
ここには中国の習近平の親族から、韓国の盧泰愚大統領の親族、アナン元国連事務総長の親族、ウクライナのポロシェンコ大統領、イギリスのキャメロン首相の親族、パキスタンのシャリーフ首相の親族と、ことごとくその名前が含まれている。
さらに香港の映画スターであるジャッキー・チェン、インドの映画スターであるアミターブ・バッチャンやアイシュワリヤ・ライ、アルゼンチンのサッカー選手リオネル・メッシなども記載されている。
利用者は贈与税や相続税を逃れることが可能
もちろん、日本人で馴染みの名前も記載されている。たとえば、セコム創業者である飯田亮がこのオフショア法人に名義移転されていて税金逃れをしていた可能性が指摘されている。
また、直木賞作家の邱永漢とその子供たちの名前もそこに記載されていて贈与税、相続税などを逃れていた可能性が指摘されている。
邱永漢は台湾出身の中国系帰化日本人で2012年に亡くなっているが、配偶者は香港出身だ。邱永漢も晩年は香港を中心に活動しており、HSBC(香港上海銀行)にもアカウントを持っていることに以前、触れていたことがある。
このHSBCも、オフショア会社を2600社ほど立ち上げていたことが判明している。
ちなみに、タックスヘイブンで立ち上げられる会社というのはペーパーカンパニーであり、実態はない。ただ、その企業の所在地をタックスヘイブンにすることにより、税制がその所在地のものになる。
つまり、税金がまったくかからないか、もしくは税金が極度に安い場所に会社を作って、そこに送金することによって利用者は贈与税や相続税を逃れることが可能になる。
法律事務所である「モサック・フォンセカ」が行っていたのが、このペーパーカンパニーの設立と管理である。
だから、この法律事務所を利用していた個人や企業は、すべて課税逃れのためにペーパーカンパニーを作ったと言うことができる。
もちろん、こうしたオフショアの仕組みを利用するのは違法でも何でもない。だから贈与税や相続税を逃れたい人間たちの資金が大量にそこに流れ、その規模は2000兆円を超す規模になっていると言われている。
法律事務所「モサック・フォンセカ」は約24万件のペーパーカンパニーを設立したと言われているが、彼らは法律に則ってその設立を代行したのだ。
合法であるかもしれないが限りなく脱税に近い
では、この仕組みはまったく問題ないのか。
もちろん、そんなことはない。どこの国でも国は一般庶民に重税をかけて逃れられないようにしている。しかし、政治家や金持ちだけはその網からするりと抜けて事実上の税金逃れを行っているのであればそれは深刻な問題である。
多くの個人は、その国の税金から逃れることが不可能になっている。
それなのに特定の金持ちや特定の企業が税金逃れし、しかも場合によっては資産の隠蔽すらもできるとすれば、それはあまりにも不公平だ。やっていることがフェアではない。
合法であるかもしれないが限りなく脱税に近い。明確な脱税目的であれば、違法であるし、ましてここでマネーロンダリングが行われていたら、それは犯罪だ。
特に有力政治家がそれを行っていたのであれば、国民に酷税をかけて自分は逃れていたのだから万死に値する背徳行為であると言える。
アイスランドのグンロイグソン首相は2016年4月5日にこの資産隠しの疑惑が「パナマ文書」で明るみに出て辞任を表明している。
グンロイグソン首相はオフショア法人を所有していることを議会に隠蔽しており、明らかな資産隠蔽を計っていたことを釈明できなかった。
政治家で言えば、ロシアのプーチン大統領も、中国の習近平国家主席も親族を使ってタックスヘイブンのペーパーカンパニーに資産を隠蔽していることが発覚している。
習近平は中国国内で「汚職撲滅運動」を行っているが、自分自身を棚に上げて「汚職撲滅運動」を進めているわけで、いかに不誠実な指導者であるのか、ありありと分かる。
このため、「パナマ文書」が明るみに出た瞬間、中国政府はすぐに中国のインターネット環境から「パナマ」という言葉を情報規制して、一般国民にその実態が分からないようにしてしまった。
海外資産を持つ富裕層も逃れられなくなっていく
日本でも、400名近い個人やいくつかの企業がこのオフショア法人を設立している。
現在、分かっているだけでも以下の企業がペーパーカンパニーを設立していたことが分かっている。
バンダイ、大日本印刷、大和証券、ドリームインキュベータ、ドワンゴ、ファーストリテイリング、楽天ストラテジックパートナーズ、ジャフコ、JALリース、東京海上ホールディングス、石油資源開発、日本製紙、丸紅、三菱商事、商船三井、双日、オリックス、日本郵船、東洋フードサービス……。
「パナマ文書」に掲載され、ペーパーカンパニーを設立し、そこに資金を流していたという実態を株主に伝えず、資産隠蔽のために利用していたというのであれば悪質だ。
これらの企業は、何のためにそんなことをしていたのかステークホルダーに説明する義務がある。
この「パナマ文書」に乗っている日本人の「個人」はまだ精査されていない。
しかし、オフショア法人を設立して資産をそこに移動していたというのであれば、脱税に近い何らかの処理が行われていた疑惑を持たれるのは必至である。数百名の本名がそこに記載されているが、彼らの身元解明が急がれる。
すでにタックスヘイブンは、アメリカ政府も「税金逃れである」として厳しく処分を行っている分野である。
日本でも一時は香港のHSBCに口座を作って資産逃れをする動きもあったが、こうした手法は封じ込められるようになっている。
2018年から国税庁は40カ国超と連携して国外の口座を監視することを発表しており、海外資産を持つ富裕層も逃れられなくなっていく。
タックスヘイブンを経由する節税・脱税・マネーロンダリングは、これからは徐々に機能しなくなっていく。